転校生の複雑な気持ち～友人との別れと出会い・経験は宝もの～

筆者の知り合いの1人に、父親の転勤の都合で、小学校を3回
中学校と高校を各2回ずつ、転校せざるを得ない環境にあった人がいます。

数年おきの転勤ゆえに、家族も一緒にとなれば
転校は致し方無いこと―

しかし、当のその知人は、幼いながらにも
「父のように転勤の多い職には就きたくない」とまで
思ったほど、子どもに与える影響は大きいものでもあります。

　

　

とはいえ、時の流れと成長に伴い、その知人も
転勤を積み重ねる職業を選び、結果としては
「かえるの子はかえる」といった人生を歩んでいるとのこと。

そこで、こちらの記事では、そんな知人の体験を中心に
転勤・転校、そして引っ越しを幼い頃に経験した人の背景を
1つずつ紐解いていきましょう。

　

　

友との別れ

　

　

転校に「別れ」は付き物―
せっかく親しくなった友達とも、わずか数年、時に数ヶ月で
さようならと告げなければならないこともあります。

もちろん、この流れは、転勤や転校を繰り返す中において
出会った時からの運命である、と言っても過言ではありません。

　

　

しかし、素敵な出会いであるほど、その別れが
辛く悲しい物になるのは、大人も子どもも同じこと。

時に、出会わなければ苦しまずに済んだのでは
とさえ感じられる場面も、決して少なくありません。

　

　

だからこそ、知らない土地に降り立ち、知らない学校へ放り込まれる
そんな状況下でこそ、話しかけてきてくれる子や
親切な人々との出会いは、かけがえのない宝物になります。

ただし、そこから親しくなれるのは、極自然なことであるものの
別れた後にも、互いに往来したり、また会えるのかというと
実際問題、残念ながらその確率は、かなり低いとも言えます。

よほどの親友であれば、話は別ですが、転校を繰り返す子どもが
たった数年で、親友と呼べるほどの深い関係を築くことは
基本的には不可能である、と考えるのが妥当でもあります。

　

　

ゆえに、結局は良くも悪くも、その場を円滑に楽しく過ごすための
間に合わせとして、関わらざるを得ない場面の方が多くなりがちです。

こうした背景から、知人を含め、転校が常になる子どもの多くは
友との別れが、新しい土地・人との出会いの準備に過ぎないものとなり
ドライな性格になりやすくなる、と言えるのではないでしょうか？

　

　

新しい出会い

新しい街へ辿り着くまでの小旅行そのものは、家族にとって
寂しい気持ちよりも、楽しい旅行気分が支配してくれると言えます。

車窓から眺める新しい景色はもちろん、一昔前であれば
列車旅での駅弁の味など、家族で過ごせる有意義な楽しさには
やはり、例え難い充実もあります。

　

　

現代でこそ見かけなくなりましたが、過去には
駅のホームで、戦時中の出征兵士さながら
「万歳」のかけ声が上がっていたこともありました。

新しい自宅に入ると、部屋決めに始まり、荷解きもままならない中
子どもは翌日から初登校、というケースも珍しくありませんでした。

　

　

廊下ですれ違う生徒は、見かけない顔ぶれである自分の姿を見ては
「誰だろう？」と、興味津々の顔つきになります。

その視線をかわしながら、いよいよの挨拶―
初めての場合でも、そうでなくとも、やはり大なり小なり
苦痛は襲いますし、慣れるまでは、恥ずかしさも否めません。

　

　

その後はきちんと、席に案内されるのが、一般的な流れですが
筆者の知り合いの場合、1度だけ、席が準備されておらず
教室の後方で待たされたことがあった、とのことでした。

こうした対応は、現代の学校現場では、まずあり得ないので
当時の教師による怠慢であった、と言っても過言ではありません。

ですが、ただでさえ心細い子どもの気持ちを逆撫でする
非常に悲しい出来事であったと言えますよね。

　

　

1度着席できれば、その後は大抵の場合、隣か付近の子が
積極的に声をかけてくれますし、時に通学路が同じ子と
親しくなれる可能性もあります。

また、親が同じ転勤同士という、親繋がりで友達になるケースや
学校行事でグループを組んだ結果、友達になれた、というケースもあります。

　

　

いずれにせよ、物理的な孤独を感じやすい転校生にとって
新たに出会う友達とは、やはりどこの地で過ごそうとも
それぞれの宝物であると言えるもの。

転勤という大人の都合で、心身が振り回され、時として
傷つきやすい転校生だからこそ、別れる瞬間を心のどこかで覚悟しつつ
大切な人との出会いを重ねていくのではないでしょうか？

　

　

経験を積む良さ

　

　

とはいえ、そもそも転校という経験は、その後の人生において
役に立つものであると言えるのでしょうか？

筆者の知人をはじめ、多くの転校の経験者が
得られたものについて、以下4つに分けてお伝えしておきましょう。

　

　

挨拶の練習

常に自己紹介を求められる環境下で育つ転校生だからこそ
大学や社会の色々な場面で、役立つ力になります。

　

　

コミュニケーション力の習得

挨拶に近いものですが、知らない教室で知らない人に話しかける
というのが常である転校生は、1から関係性を作る力に長けています。

普段から同じ場所にいて、変化のない生活を送っている人ほど
衰えやすい能力の1つなので、その意味では
転校生だからこそのコミュニケーション力であると言えます。

　

　

情報網の拡大

人よりたくさんの地域を巡る転勤や転校における
最大の特権といえば、観光の機会の多さではないでしょうか？

知らない名所や旧跡観光をはじめ、地元の美味しいものなど
人生へのプラスになる情報網を拡大できるチャンスであると言えます。

　

　

「受験」という経験値

転校する上で実施されることもある「編入学試験」は
ずばり、受験という物の練習ができる場でもあります。

人生において大きな試験はいくつかありますが
この編入試験も、大きな岐路に立つ人の重要な試験の1つ―

一昔前までは、合格すれば、転勤した家族と同居でき
不合格であれば、そこから1人暮らしという選択になったため
人生を左右する大きな試験であったと言えます。

　

　

こうした部分からも、転校のハードルとは、時として
人生に寄与する体験になり得るということが分かりますよね。

寂しさや大変さが大きいからこそ、それぞれの地で得たものは
その後の人生に生かされる、と言えるのではないでしょうか？

　

　

転校生の気持ちと経験にまつわるまとめ

ここまで、転校生ならではの、孤独や葛藤
また新しい経験について、あらゆる角度からお話してきました。

最後に、この記事の要となる、転校生当人の気持ちを
紐解いておきましょう。

　

　

当の知り合い自身の気持ちはどうだったのか―
振り返ってみた思いを、聞いたことがあります。

本人曰く、引越しや転校は、当時の自身にとって
やはり悲しみや寂しさが大きく、嫌なイベントが定期的に繰り返される
といった感覚が拭いきれなかったとのこと。

しかし、振り返ると、色々な土地を知り、美味しい特産物を食べ
あらゆる人々と交流できた、という貴重な経験と事実を残せたと言います。

　

　

長年、同じ場所に住みながら、親交を深め、生涯の友を見出すのは
非常に素晴らしいことですが、一方では、必ずしもその地元で
そうした良縁に出逢える、という保証はどこにもありません。

短い期間でこそ、かけがえのない友達と出会えるのはもちろん
反対に、気に入らない雰囲気や、自分に合わない土地・人であっても
少し我慢すれば、嫌でもまた別の地へ身を移し変えられるもの―

　

　

転校や引っ越しに対して、複雑な気持ちが渦巻くのは
至極当然のことであるからこそ、こうした場面が多いほど
子どもも大人も、誰しもが1度は悩むのではないでしょうか？

「ふるさと」と呼べる場所が無い寂しさこそありますが
あらゆる環境を、広く浅く、楽しく経験する分には
これ以上ないチャンスである、とも言えますよね。

　

　

こうした背景を踏まえて、昨今は、公務員以外の各企業の方針でも
転勤そのものが減少傾向になってきています。

子どもの将来を、どのように考えるのか―
そうした問題と大きく関わる転勤は、ずばり1つの課題である
と言っても過言ではありません。

転勤や引っ越し、転校による不安や焦りは、簡単に拭えるもの
ではありませんが、少しずつでも、その地毎のエネルギーに触れながら
ぜひその悩みと経験を、大切な歴史として捉えてみてくださいね。